ディレクター/プロデューサー高橋宏典インタビュー :第1回 『Last Labyrinth』企画経緯と「カティア」について

こちらのカテゴリでは 『Last Labyrinth』について、公式サイトやSNSでは語り切れない熱い!?思いや、ゲームに関する秘話的なお話を配信していきます。

記念すべき第一回は、『Last Labyrinth』のディレクター/プロデューサーである高橋宏典のインタビューをお届けします。『Last Labyrinth』の企画経緯や状況、「カティア」について、私、広報担当ATが色々と聞いてみました。

『Last Labyrinth』の開発にあたり、VRゲームならではの苦労などはありますか?

VRでは、キャラクターの動きや背景のモデルなど、ちょっとした事で違和感を感じることが多くて。2Dの画面で遊ぶPCや家庭用ゲームでは気にならないレベルでも、VRだと、そういう部分が物凄く気になるので、すごく苦労してます。特に『Last Labyrinth』は、「カティア」という少女をずっと注視し続けるゲームデザインになっているので、特に、キャラクターアニメーションに求められる表現が、当初に思っていたよりも物凄く細かく、難易度が高いなぁと。自分が選んだ題材なので自業自得なんですけど。

「カティア」だからこそですよね。

例えば、自分のキャラクターを操作するゲームだと、自分のキャラクターの動きをずっと見ているわけではなくて、操作しながらも、キャラクターの移動する先や、敵を見ていたりするんですよ。『Last Labyrinth』のように、キャラクターを注視し続けるようなゲームは、意外と少ないかもしれないですね。

確かに。何故、「カティア」を注視するような状況、つまり、プレイヤーが車椅子に拘束されている状態にしたんですか? VRなのに自分自身が全く動けないという状況は珍しいと思うのですが。

※プレイヤーは車椅子に拘束されていて、カティアにはレーザーポインターで指示を出し、頭を縦横に振って意志を伝える。

それは『Last Labyrinth』のコンセプトを考えるときに、いくつか考えたことがあって。

まず、企画を考えていた2015年の終わりから2016年の前半ぐらいまで、VRのミートアップなどにいって、色んな会社のVRコンテンツを体験してみたのね。面白いコンテンツもあったのですが、VRなのに体験中に没入しきれないな、と思うものも結構多くて。なぜかと考えてみたら、VR世界での操作方法が複雑すぎるのが原因かもしれない、と思ったんです。

体験中に「あれ? 移動するにはどうしたらいいんだっけ?」「目の前のモノを掴むにはどうしたらいいんだっけ?」と思ってコントローラーを意識してしまったりとか。VRコンテンツによっては、外部マイクから「右側の〇〇を見てください」とか「レバーを引くと〇〇がでますよ」とボイスアシストしているものもあって。

せっかくのVRなのに、世界観や操作方法がわからなくて、没入感を得られるまでの時間がかかり過ぎるのは課題だと思ったんです。それで、これを解消するには、できるだけシンプルな操作方法のものがいいな、と考えたわけです。

あとは、PlayStation®VRにも対応したいなと思っていたんですが、PlayStation®VRのガイドラインでは事故防止のために、できれば座ってプレイしてくださいというのがあって。当時の Oculus Rift もまだ Oculus Touch が出る前で、基本的には座ってプレイすることを推奨していたんですよ。

そういう2つのファクターがあったので、できるだけ短い時間で没入できるように、シンプルな操作方法のゲームデザインにしようと考えたのと、そもそも、プラットフォーム側のガイドラインで座ってのプレイが推奨されていたので、じゃあ、最初から座ってプレイすることが変じゃないというようなゲームデザインにもできないかと考えて。

2つの課題を解決する方法として、今のように座ってプレイするようなゲームデザインになったわけです。 

なので、PlayStation®VRやOculus Riftのガイドラインが立ってプレイすることを推奨していたら、今頃、立ってプレイするゲームになっていたかもしれないですね(笑)。 あと、VIVE専用にしていたら座ってプレイする形にはなってなかったですね。

ただ、このゲームデザインを選択したおかげで、短い体験時間でも、すごく没入感があって、ゲームの世界に入り込めるというプラスの意見をもらえるようになったので、この選択で『Last Labyrinth』としてはすごく良かったと思っています。

「カティア」でこだわっているポイントは?

人物としての存在感、性格や雰囲気を感じさせるような実在感には、すごくこだわっています。これはアニメーションによるカティアの演技の積み重ねで実現しています。福山(リードアニメーター)はいつも「イノセント感」と言っていますが(笑)、まぁそんな感じです。

あとは、プレイヤーを頑張ってアシストしてくれるけど、そこまで頼りがいがある存在じゃないという描き方というのはすごく意識しています。だって、これが、ムキムキマッチョなお兄さんだったら・・・「そんな仕掛けなんて跳ね飛ばせばいいじゃん!」ってなるでしょ?

確かに!「そんなん、飛び越えちゃえばいいじゃん」ってなりますよね(笑)

そうそう、「そんなの片手で持ち上げられるでしょ?」ってなっちゃうので。

ちなみに、PlayStation®VRでは12歳以上、Oculus Rift や Steam VR では13歳以上の推奨年齢の規定があるので、「カティア」はそこよりもう少し若く、年下にみえるようなキャラクターデザインにしています。12、3歳のプレイヤーから見ても、少し頼りなく見えるような存在であって欲しいからですね。

重い鉄の板を持ち上げるカティア

では、「カティア」についてもう少し聞かせてください。髪の色はなぜあの色なんですか?

それは、日本のアニメ的なルックスを入れたかったからです。日本のゲームスタジオのタイトルだと一目でわかるようにしたかったので。世界中のゲームプレイヤーの皆さんも、日本のゲームスタジオに「The Last of Us*¹」のエリーみたいなリアルな少女は期待しないでしょうし。それから、我々は小規模なチームなので、現実的にフォトリアルなモデルを作るほどの予算や期間がないという理由もありました。

それであえて、日本のアニメっぽい表現にしたと。

そうですね。それにキャラクターとして「アイコン」にしたかったのもあります。緑の髪のショートカットに、赤い眼、白いワンピース、ピンクの長靴の組み合わせで、アイコニックに「カティア」だとわかる。リアルなキャラクターにして、表現にしてしまうと、キャラクターとしてはわかりにくい。なので、そこはわざとアニメ的な表現を入れました。

なるほど!まだまだ、聞きたいことは沢山ありますが、今回はここまでということで。ありがとうございました!

皆さんが聞いてみたいこともコメントいただければ、高橋にインタビューしますので、お気軽にどうぞ!

また次回をお楽しみに!

*1 The Last of Us:2013年にPlayStation®3で発売されたサバイバルホラー アクションアドベンチャーゲーム。2014年にはPlayStation®4のHDリマスター版が発売された。全世界で200以上のゲームアワードを受賞している。